2018年10月13日土曜日

出光美術館「仙厓礼讃」6


 この三つの形態あるいは形について、上記とは異なるもう一つの解釈がある。それはより一層長い歴史をもつ解釈である。仙厓は禅とともに、仏教的マントラ派ともいうべき真言密教に関心を寄せていた。仙厓は肉体的存在(ルーパカーヤ)そのものを、絶対的真理(ダルマカーヤ)とみなす真言密教を好ましく感じていた。

真言密教においては、生物的、言語的(あるいは理性的)、そして観念的(あるいは精神的)という三つの要素を象徴する△によって人間の肉体を、つまり肉体的存在をあらわすのである。

□は土と水、火、空気という四つの要素からなる客観的な世界をあらわす。絶対的真理であるダルマカーヤは、○であらわされるが、それは定形というものをもっていない。一般的に我々は、有形(ルーパカーヤ)対無形(アルーパ)、客観対主観、物質対精神というように、二項対立的にものの存在を把握する。またその両者は相たがいに矛盾し、排他的であると考えがちである。

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