2018年8月11日土曜日

大原美術館美術講座12


H椹木野衣×会田誠『戦争画とニッポン』(講談社 2015

会田 だから、日本人の戦争画はやっぱりやさしい。当時の美術雑誌をぱらぱらと見ていても、画家たちが現地でささっと描いたような、ちょいとしたスケッチのほうが、生き生きとしているような気もしますし。日本人は文学でも重厚な長編よりエッセイ的なもののほうが得意だったりするので、戦争画も、ふと詠む俳句のように「墜落した飛行機の残骸は哀れをさそうなあ」みたいな淡彩画のほうが、得意な感じもするのです。だから日本の戦争画を見る面白さのひとつは、もしかしたら世界でも一番、戦争画に向いていない民族がやろうとした、ということかもしれません。戦争画を見せるとアジアの人を傷つけるという理由で、タブー視されているけれども、むしろちゃんと見せたらいいと思うのです。もしかしたら、「ここまでむいていなかったか」「そりゃ戦争に負けるわ」と言われるかもしれません。それは日本の兵士に残虐行為がなかった、などという話とはまた別ですが。当時の従軍画家たちが全体としてどんなメンタルの持ち主だったかということですが、それは現在でもあまり恥ずべきメンタルではなかったと思うのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿

ブータン博士花見会3

  イングラムはサクラの美に魅入られたイギリスの園芸家で、「チェリー・イングラム」という愛称を捧げられたほどでした。 1926 年、再び日本にやってきたイングラムは、日本人の関心が派手なサクラに向けられ、珍しい品種はないがしろにされて、本来の多種多様性が消滅しかかっている日本のサ...