2018年7月29日日曜日

後期高齢者と李賀4


その根底には世紀末的ペシミズムがあったのでしょう。「長安に男児有り 二十[はたち]にして心已[すで]に朽ちたり」という一句に象徴されています。我が岩佐又兵衛筆「豊国祭礼図屏風」の「いきすぎたりや廿三」はかぶき者の言辞ですが、みずからを受け入れてくれない世の中に対する憤懣、あるいは諦観という点で響き合うものがあります。

性格的にも円満とは縁なき李賀だったらしく、数多くの伝説に彩られているそうです。ぜひ荒井健さんの『中国詩人選集』を手に取って、そのすぐれた解説を読んで欲しいですね。この選集の最後に載っているのが、「少年を啁[あざ]ける」です。

この七言詩は、「少年を刺[そし]る」として『古文真宝』にも採られる、李賀の代表作です。『唐詩選』に李賀は載りませんから、日本人は最初『古文真宝』により、この鬼才詩人を知ったにちがいありません。27歳で夭折した李賀の詩であることを知るとき、改めてそのイマジネーションをたたえたい気持ちになりますが、後期高齢者になったのを機に、マイ戯訳で紹介することにしたという次第です。

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