これまで素信なる画家が描いたのは、もっぱら蘭の絵であると考えられてきましたし、もちろん僕もそう思ってきました。これを最初に指摘した相見香雨先生は、この素信が渡辺始興である可能性が強いことを指摘しましたが、実証にはいたりませんでした。
ところが野口さんは、この「一連」というのが絵ではなく、表に書かれた五言二句の「一聯」であることを見抜き、いまは失われてしまった始興筆「山水図」の自賛と比較することによって、可能性に止まっていた始興素信同一人説をついに証明したのです。琳派研究史上の快挙です!!
もちろん、こういうことにあまり関心のない方は、光琳の「燕子花図屏風」と乾山の「銹絵染付金彩絵替土器皿」という、根津美術館がほこる天才兄弟の二大名品に酔いしれるだけで、至福の一時を楽しむことができるでしょう。それはそれで、すばらしい美術鑑賞です。
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