だが彼女によれば、化猫にはずいぶんと愛らしいのもいた。土井山城守の居城刈屋城には、いつしか小犬ほどの猫が棲みついていた。ある春のこと、ある春のこと、「花の盛りいつよりも出来よく、日もすぐれて長閑」だったので、御番の侍たちは申し合わせて、外庭の芝生で花を見ながら弁当をつかっていた。そこへどこから現れたか、「えもいわれず愛らしき小猫の毛色見事にぶちたるが、紅の首たが掛けて走りめぐり、胡蝶に戯れ遊ぶさま、あまり美しかりし故、いずれも見とれて居たりしが」、そのうち「首輪をかけたのは飼猫の証拠、こんな小猫がどうやって城中まで迷い来たのか、怪しい怪しい」と言いながらある者が焼お握りをひとつ投げてやると、小猫はたちまち大猫の正体を現わしてそれに喰いついた。正体を見せたのを羞じたのか、お城に棲むその大猫はその後二度と人前に姿を見せなかったという。
2018年2月7日水曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
山種美術館「桜さくらSAKURA2025」4
人はだれしもこの幸福な島国で、春、とくに桜の季節を京都や東京で過ごすべきだ。その季節には、思い思いに着飾った人々が、手に手をたずさえ桜花が咲き乱れる上野公園をはじめ、すべての桜の名所に出掛けてゆく。彼らはその際、詩作にふけり、自然の美と景観を賛美する。……世界のどの土地で、桜の季...

-
もちろん雅文化であるクラシック音楽に、造詣が深かったことは言うまでもありません。ハープ奏者として活躍している摩寿 ( 数 ) 意英子さんは、高階先生と何度も一緒にお仕事をされたそうです。 その摩寿意さんが、先日僕の「追悼 高階秀爾先生」に、先生が音楽にも大変お詳しいことに...
-
高階秀爾先生が10月17日、 92 年の超人的生涯を終え白玉楼中の人となられました。ご逝去を悼み、心よりご冥福をお祈り申し上げます。 一人の人間が、これほどの質量を兼ね備えた仕事を一生の間になし得るものでしょうか。しかも特定のジャンルに限定されることはありませんでした...
-
その引き出しの中身が、引き出しを飛び出して渾然一体となり、知の有機体を形作っていることでした。引き出しのように見えたのは、僕らの眼が旧態依然とした学問の枠組みに規制されていたからでした。小さな箪笥の引き出しなんかじゃなく 、有機体としての知が、一つの大きなクローゼットに入って...
0 件のコメント:
コメントを投稿