もちろん、その明晰なエレメントがそのままに放置されるわけではありません。互いが競い合いつつも、みごとなハーモニーへと昇華しています。その結果、PPMに比べて、ちょっととんがったクリアネスとそこから生まれる華やぎが強まった、Heart Streamサウンドが東洋の島国で創り出されることになったのです。
それは微妙な違いかもしれませんが、日本美術と呼応する感覚があることに、僕はとても大きな興味を感じます。それは、日本美術における「写し」の問題です。とくに、日本美術の中核に位置してきた茶の美術における「写し」の存在です。
先行するすぐれた作品をそっくりそのままに写すけれども、そこに生まれるほとんど無意識に近い微妙な差異を楽しむ美意識です。Heart Streamサウンドは、このような「写し」の感覚ととても近いように思われるのです。
もちろんHeart Streamのほかにも、PPMカバー・バンドは少なくありません。しかし、もっとも完璧にコピーしているHeart Streamに、もっとも大きな感動を覚えるのは、ちょっと不思議な感じがしますが、日本美術における「写し」の問題を考えることによって、ある解答を得られるのではないでしょうか。
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