2017年8月11日金曜日

静嘉堂文庫美術館「私の好きな茶道具ベスト10」14<因陀羅 禅機図>1


 ⑦因陀羅「禅機図断簡(智常禅師)」は因陀羅最高の傑作です。もっとも、この因陀羅なる画家については、よく判っていません。もともとインド人だったともいわれ、開封の大光教禅寺に住む禅僧でしたが、元時代の末、華北が争乱の地と化したため、淅江地方に移り住んだらしいのです。

中国の画史には登場せず、日本の阿弥派一派が作った『君台観左右帳記』に出てくるだけで、まるで幽霊のようなお坊さんです。お坊さんが幽霊になっちゃーまずいかな?

画面左側に元時代のすぐれた臨済宗の禅僧、楚石凡琦の賛があり、智常禅師が張籍と禅問答をしているシーンだと推定されています。智常禅師は唐時代の禅僧で、廬山の帰宗寺に住んでいました。張籍は同じく唐時代の詩人、いい詩が出来るようにと、杜甫の詩集を燃してその灰を蜜に混ぜて飲んじゃったという逸話で有名です。そんなことで詩がうまくなるなら、詩人なんて楽な商売だと思いますが!? その賛詩を僕の戯訳で……

 智常禅師と張籍の 屁にもならない禅問答
 仏の法や神の道 ありやしないさ そんなもん
 何か一つをマスターし 悟りを開きたいならば
 明媚なる山 澄んだ水 すべてのものがそこにある

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』7

しかし渡辺浩さんは、先行研究が指摘した二つの点について、高橋博巳さんの見解が示されていないことが、やや残念だとしています。その先行研究というのは、大森映子さんの『お家相続 大名家の苦闘』(角川選書)と島尾新さんの『水墨画入門』(岩波新書)です。 僕も読んだ『お家相続 大名家の苦闘...