2017年6月12日月曜日

中村賞1


6回「中村賞」(611日)

前田青邨画伯は尊敬して止まない、そして何よりも大好きな近代画家です。かつて文化庁長官をつとめた作家、今日出海は画伯を評して、「平凡なる非凡」と言いましたが、この賛辞は、このところ名曲「東京オリンピック音頭」をふたたび耳にすることが多くなった三波春夫にこそふさわしいかもしれません!? 

僕はむしろ反対に、「意識されたしたたかさ」を画伯に感じます。「したたか」を漢字で書くと、「健か」あるいは「強か」となりますが、画伯の場合は「健か」がふさわしいように思います。「健か」と「強か」が入り混じったような感じだといってもよいでしょう。

『広辞苑』に「したたか」を求めると、第二義として「しっかりしているさま」が挙げられ、『源氏物語』「末摘花」の「御歌も、……ことわり聞えてしたたかにこそあれ」という一節が引用されています。あるいは、この感じに近いかもしれません。

画伯は「健か」かつ「強か」であり、しっかりしている――しかしそれは意識されたものであるというのが私見です。そして重要なのは、その「意識されたしたたかさ」が、画伯が大変つよい影響を受けた大先輩、横山大観にも看取されるという点です。かつて僕はあるエッセーに書いたところですが、今もこの青邨観はあまり変わっていないのです。

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