2017年7月1日土曜日

静嘉堂「曜変天目」7


 単に美しいだけでなく、雨がやみ、天気がよくなっていく表象として、虹がたたえられているようです。あるいは、一瞬美しい姿を見せて、すぐに消えてしまう虹に、彼らははかなきものだけがもつ真の美を感じ取ったのでしょうか。

和歌だけではありません。俳句になると、中村草田男に「虹に謝す妻よりほかに女知らず」という一句があります。もちろん草田男は虹に感謝しているのであって、俺は不甲斐ない男だと、虹に謝っているのではありません!? 中国における「邪淫のシンボル」、つまり不倫の真逆ではありませんか!!

このような虹を忌むべきものと見なす思想ゆえに、虹彩鮮やかな曜変天目茶碗は中国で嫌悪されて国外追放に遭い、そのような伝統がまったくなかったわが国では、虹のごとく七色に輝く最高の茶碗として、きわめて高い評価を集めることになったというのが私見なのですが!?

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』12

  そのとき『君たちはどう生きるか』の対抗馬 (!?) として挙げたのは、色川武大の『うらおもて人生録』(新潮文庫)でした。京都美術工芸大学にいたとき、『京都新聞』から求められて、就職試験に臨む受験生にエールを送るべくエッセーを寄稿したのですが、本書から「九勝六敗を狙え」を引用し...