最後に、山種美術館「桜 さくら SAKURA 2025 美術館でお花見!」展のチラシに刷られたコピーを紹介することにしましょう。そこにある「はらはらと散っていく儚はかなさ」は、新渡戸稲造にならって言えば薔薇に欠けている美しさです。
暖かな陽光がさし始める春。草花が芽吹き、心躍る季節です。なかでも私たちの気持ちを浮き立たせるのは、桜の開花ではないでしょうか。このたび当館では、桜の名品を一堂に展示し、美術館にいながら、お花見に訪れたかのように気持ちが華やぐ展覧会を開催します。
桜がらんまんと花を開かせた時の美しさと、はらはらと散っていく儚さは、古くから日本人の心を魅了してきました。芸術の世界においても、古来、詩歌に詠まれ、調度や衣装などの文様に表されるとともに、絵画にも盛んに描かれています。近代・現代の日本画でも、桜は多くの画家が取り上げたテーマであり、画家の個性や美意識が反映された多種多様な表現をみることができます。……2025年春、個性豊かな桜の絵画で満開となった会場で、お花見を楽しみながら、春を満喫していただければ幸いです。