岡田秀之『かわいい こわい おもしろい 長沢芦雪』(新潮社<とんぼの本>)
嵯峨嵐山日本美術研究所の岡田秀之さんが、かの奇想の画家・長沢芦雪をモチーフに、絶対のオススメ本を著わしました。6年前、岡田さんが企画開催した特別展「長沢芦雪 奇は新なり」は、改めて芦雪の魅力を僕たちに教えてくれたものでした。
そのとき僕も声をかけられ、当時MIHO MUSEUMの館長をつとめていらっしゃった辻惟雄さんと、この4月から僕のあと京都美術工芸大学プレジデントを引き受けてくれた冷泉為人さんと3人で、芦雪をサカナに鼎談をやったことを懐かしく思い出します。
鼎談の前に、岡田さんを含めた4人で会場を回りながら、僕が「こんなすごい芦雪、どこで見っけたの? 俺もまったく知らなかった傑作だ!!」といった調子で「饒舌館長」をやっていたら、ガードマンの美しいお嬢さんから、「お静かに願います!!」と一本取られたのも、懐かしい思い出、いや、ちょっとほろ苦い思い出です。
その岡田さんが、さらに多くの人に芦雪というシャングリラに遊んでもらいたいと、満を持して世に問うたのが、この「とんぼの本」です。「応挙よりウマイ 若冲よりスゴイ 伝説の絵師のすべて」という腰巻も、岡田さんの意気込みを語っているようです。もっとも、考えたのは担当編集者の黒田玲子さんかもしれませんが……。