絵金が役者絵や歌舞伎のスターシステムから決別して、狂言の内容に関心を集中させている点も特筆に値します。今の言葉でいえば、歌舞伎を舞台芸術としてながめるような近代的視覚です。鳥居清信以来、ほとんど役者絵と表裏一体をなしてきた歌舞伎絵、一筆斎文調・勝川春章以来、役者似顔絵と深く結びついてきた歌舞伎絵にあって、それは革命的な出来事でした。
五代目松本幸四郎と五代目岩井半四郎の面影が指摘される「浮世柄比翼稲妻 鈴ヶ森」のような作品もありますが、このような絵金芝居絵屏風はほかにチョッと見当たりません。あまりにも潔い役者似顔絵との決別を、名代の名優がほとんどいなかったと思われる地芝居と関係づけたい誘惑にも駆られるのです。
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