「僕の一点」は、何といっても「酔余美人図」ですね。北斎最高傑作の一つでしょう。あんまり素晴らしいので、10年ほど前、お元気だった黒川(氏家)ご夫妻のお許しを得て、『國華』1452号に拙文解説を寄せちゃったんです。「北斎はバロックだ」というのが持論なので、この作品についても次のような一文をもって〆にしたのでした。
しかし新しい創造を希求して止まぬ北斎は、宗理型美人を再生産することを潔よしとしなかった。「亀毛蛇足」印を用い始めるころから、新しい美人型の創出に挑戦するようになる。「亀毛蛇足」印使用時代の北斎美人図を、宗理型美人にならって亀毛型美人と呼んでみたい。この亀毛型美人は、宗理型美人が湛えていた古典主義的、あるいは浪漫主義的女性美を惜しげもなく捨て去って、19世紀という新時代に即応する女性美を誇示するようになる。それを一言でいえば、バロック的女性美だと断言してよいであろう。
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