このカタログには、氏家浮世絵コレクション理事長をつとめる内藤正人さんが、やはり「酔余美人図」をテーマに、「『酔態』と『睡態』――酔余美人図のコンテクスト」という魅力的な巻頭論文を書いています。酔態と睡態――タイトルがまた洒落ているじゃ~ありませんか。
とくに僕が興味を惹かれたのは、『勢田橋龍女本地』によく似た姿態の美人が描かれているという指摘でした。『勢田橋龍女本地』は文化8年(1811)に出版された読本で、作者は柳亭種彦、挿絵は種彦と親しかった北斎です。
僕もこの読本の題名は知っていました。鈴木重三先生が著わした北斎研究の基本文献ともいうべき『人間 北斎』(緑園書房 1963年)に、北斎が晩年愛用したチリチリとした衣文線について、年代が確定できる初出はこの読本であると指摘されていたからです。
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