2024年10月3日木曜日

千葉市美術館「田中一村展」4

 

速水御舟がかの「名樹散椿めいじゅちりつばき」(山種美術館蔵)を発表したのは、一村の「椿図屏風」に先立つこと2年、昭和4年(1929)秋の第16回院展でした。一村が「名樹散椿」を見て、インスピレーションを得たことは疑いないでしょう。しかし、ほとんど越えることのできない御舟の傑作に対峙した24歳の一村には、二つの「苦」があったように感じられました。「苦悩」と「苦闘」です。

それを想像しながら、僕は魅入られるようにカードを取っていました。いまそれを引っ張り出してくると、その日は201425日、丁寧に落款印章を写したあと、一村は「名樹散椿」を見たにちがいないなどとメモっています。「A゜新出の傑作なり」という評価をながめていると、10年前の感動が昨日のことのようによみがえってくるのです。

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