その棟方君から、先日私は一通の書面を貰った。中にこんな文句が書いてあった。――中央公論社様から、わたくしの「板極道」という本を出すことになりまして、……(以下略)
――当人は奇を衒てらっているのではなく、大真面目でこんな書き方をする。
棟方君によればこの「板極道」は、ミチヲキワメルではなく、世に云うゴクドウの意であるという。そしてバンゴクドウと読ませるのだという。「先生」と書かないで「先醒」と書くのも同君独特の文字遣いで、こんな風な文字遣いが同君の書簡にはいつも文中至るところに満ちている。「敬って、尊とくあります」なども不思議な云い廻し方である。
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