君は又云う、「板画と倭絵やまとえと、それから書、油絵と、それぞれ違った表現のものの中に、わたくしの藝術の願望を、それぞれの深さとか幅とかを見出したいと思うのであります」と。
私には画家としてのこの人の全貌がまだ十分には分かっていない。しかし私の「鍵」や「瘋癲老人日記」等々に版画を以て描いてくれた挿絵の数々の面白さには、私は深く敬服している。私は今でもこれらの作品を座右に置いて、時々開いて見ては飽くことを知らず眺めている。昔私は「蓼食ふ虫」の小出楢重君の挿絵によって少なからず力づけられ、励まされたが、棟方君の場合も同様である。
君の眼病は相当に重く、医師に仕事を禁じられているのだと云うが、にも拘らず、君は禁を犯して日々製作と闘いつつある。それにつけても、私はこの特異な画家のために、ひたすらその自重と健康とを祈るものである。
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