それまでぜひ拝見したものだと思いつつ、実見の機会はなかなか得られませんでした。それというのも、これは秘仏のような作品で、毎年旧暦の5月18日に1時間だけ公開されることになっていたからです。いつも時間の調整がつかず、ついに見ないままにきてしまっていました。これを見ずして、応挙の幽霊なんて書けるわけがありません。
しかしオファーがかかったあと、弘前大学の須藤弘敏さんが、青森県の文化財調査の一環として、これを調査するという情報がもたらされました。僕は無理を言って調査の一行に加えてもらい、ただこの一点を見るために、羽田から弘前へ向かったのでした。
予想に違わず、久渡寺の応挙筆「反魂香之図」は大変興味深い作品でした。実際にこれを詳しく調査できたおかげで、僕は「応挙の幽霊――円山四条派を含めて」という一文をまとめることができたのです。
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