前漢の時代に、こんな素晴らしい文化がすでに生れていたのかという驚きを新たにした思い出の場所――それが僕にとっての長沙なのですが、そこには登さんが描き遺してくれたような風景が、まだ確かに残っていました。登さんが描き伝えてくれている街の喧騒もそのままでした。
しかし登さんのスケッチを見て懐かしくなるのは、そのためばりでないように思います。ひとしなみに、見る人をしみじみとした情感に誘う魂魄のようなもの、言霊にならっていえば「形霊」や「色霊」が、画面には揺曳しているからです。これこそ登さんが遺した絵のもっともすぐれた魅力にほかなりません。
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