2021年3月20日土曜日

まちの記憶・蒲田11

 

銭湯に行かずして、江戸文化を語ることはできないなどと言えば大袈裟だが、『浮世風呂』の世界は確かに今も生きている。

 ご近所らしい老人同士の親しげな与太話を聞き、隣の女湯から漏れる世間話に耳を澄まし、タオルや石鹸も売る番台や、その前のロビーでテレビやスポーツ新聞にくつろぐ人たちを見れば、もうそれは『浮世風呂』そのものではないか。今の日本人はお行儀がよくなっているから、喧嘩もなければ悪口雑言も聞こえない。少子化が進んでいるから、子供たちがグループで来ることもないし、子守の女の子もいない。しかし『浮世風呂』の雰囲気は、間違いなく今の銭湯に受け継がれている。

 町衆の伝統ゆえか、京都が銭湯文化においても一頭地を抜く街であることはうれしい。銭湯学を提唱する町田忍さんによる「全国選りすぐりの銭湯10選」に、藤の森湯と船岡温泉の二つも入っているのだ。前者はカフェになっているけれども、古きよき日の面影は充分に伝えられている。

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