この広範なテーマを扱った全5巻からなる大著(『現代画家論』)の出発点は、大胆な筆遣いの新たな表現で物議を醸していたターナーの擁護論にありました。ターナーの作品のなかで、とりわけラスキンが考察したのは、版画集『研鑽の書』に収められた作品群と水彩画です。かれ自身、生まれながらの素描家であり、自然界をあらゆる角度から知るための手段として、素描を位置づけていました。すなわち、ラスキンは、素描に取り組むときこそ、自身が興味深いと感じるすべての事象をさらに深く熟視できることに、実体験を通して気づいていたのです。
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