これはいよいよ今日から、我が静嘉堂文庫美術館で始まった「松浦武四郎展」のリードです。僕が松浦武四郎という偉大な存在をはじめて知ったのは、桑原武夫先生の『一日一言』(岩波文庫)においてでした。毎日、その日の項を必ず読むという日課を、僕は学生のころから続けてきました。
いつ、どこで読むのかって? 朝、於トイレです――桑原先生、申し訳ございません!! その2月6日の条に、「この日伊勢に生まれた探検家」として、武四郎が登場するんです。その項を、丸写ししておきましょう。
我、もと遊歴を好んで山川を跋渉して、いかなる険もいとわず、日に十六、七里、その甚だしきときには三十里にも向うことなり。しかるに粗食を常として、生来、美服を好まず。不毛の地に入るときは、日に二合の米を食して、その余は何にても生草生果の類、生魚、干魚等を多分に食し、身命堅剛……(伊)勢国を出でしより未だ一日も病にさわり候こともなく、一帖の薬を服することもなし。(自伝)
我死なば 焼くな 埋めな 新小田に 捨ててぞ秋の みのりをば見よ(辞世)
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