『自伝』の一節もすごいなぁと感動を呼び起こしますが、僕はその辞世に、さらに強く心を動かされました。それは歳をとるにしたがって、2月6日がめぐってくるたびに、だんだんと強まっていきました。その後、少なくない偉人の辞世を知りましたが、武四郎を超えるものに出会った記憶はありません。
ところが今回、これは武四郎が理想を述べた辞世であって、実際はそうじゃなかったことを知りました。武四郎は晩年、法隆寺や伊勢神宮外宮、出雲大社など、かつて訪れた全国の名だたる社寺から古材を譲り受けました。それを用いて「一畳敷き」の書斎を、神田五軒町の自邸に増築し、そこで悠々自適の日々を送りました。現在は、国際基督教大学内の有形文化財「泰山荘」に移築され、大切に保存管理がはかられています。
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