2018年9月20日木曜日

『君たちはどう生きるか』2


しかし、東京国立文化財研究所から名古屋大学にとらばーゆしたころ、こんな僕でも、遅まきながらちょっと人生について考えるようになりました。というより、人生の先輩として学生と雑談するとき、自分の体験だけじゃなく、「誰々はこう書いているよ」などといって、ケムに巻く必要があったんです() 

何冊か人生論本を読みましたが、やはり一番は『君たちはどう生きるか』(岩波文庫)でした。さっき、何十年ぶりかで書架から引っ張り出すと、1983年の第6刷でしたが、吉野氏の相対主義、人治主義、楽観主義、コスモポリタン的な考え方が、僕の人生観とよく共鳴したからです。もっとも、その進歩主義的な立ち位置は、ちょっと僕とちがっていましたが、それ以外には深く共感したのです。

とはいっても、吉野氏の分身と思われるコペル君の叔父さんみたいに、禁欲的に、高踏的に、あるいは思索的には、とても生きられるもんじゃないなぁというのが、率直な読後感でした。


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