『陸游集』では3句目が「風林一葉下」となっていますが、蘇さんは「楓林一葉下」とされています。詩中一点の朱といった感じになりますが、蘇さんがあえて「楓」にされたか、あるいは「楓」になっている版があるのでしょう。
少なくとも唐詩では、版により字が異なっていることも珍しくありません。なかには作者まで違っていることがあるんです。例えば『唐詩選』に載る張謂の「喬琳に贈る」という七言古詩は、劉シン虚という人の作とも言われているそうです。また『唐詩選』で駱賓王の作となっている「霊隠寺」という五言排律は、実際のところ宋之問の詠だそうです。もっとも駱賓王作は、ある逸話から生まれた異説のようですが……。
蘇さんにしたがって「楓」を採れば、「楓林の真っ赤に染まった一葉ひとは落つ露けし草にすだく虫たち」となるでしょう。これまた素晴らしいですね!!

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