その蓋表に、金泥、銀泥、白彩、呉須をもって、松が絵付けされています。「光琳松」と呼ばれる単純化された松の形――チョッとクラゲを思わせる形は、日本絵画の特徴ともいうべきシンプリシティーの極致だといってもよいでしょう。それを頭に乗せた松全体のフォルムが、とてもやさしいことに改めて気づかされます。そのやさしい松が、蓋のやわらかいフォルムとよくマッチしているように思います。
身の内側には、白化粧を施した上に金泥と呉須で波文が描かれています。その線はスピード感にあふれ、しかも鋭いのです。それは松のやさしさと対照的な美しさを秘めています。この波を描いたのは兄の光琳にちがいない――というのが山根有三先生の見立てでした。山根先生にしたがえば、この蓋物は光琳・乾山兄弟の合作だったことになります。
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