2025年9月24日水曜日

サントリー美術館「絵金」12

もちろん異時同図法は絵金が考え出した構図法ではありません。もっとも有名なのは「玉虫厨子」(法隆寺蔵)の「捨身飼虎図」や、「伴大納言絵詞」(出光美術館蔵)――伴大納言の出納の子と、隣に住む右兵衛の舎人の子がケンカをしている場面ですね。一幅のなかに四季の草花を描きこんだ草花図も一種の異時同図法です。伝統的な四季花鳥図屏風も、広義の異時同図法だといったら、ミソもクソも一緒にするなといって怒られるかもしれませんが……。

日本では普通に用いられる構図法の一つが異時同図法でした。ところが西欧では、異時同図法を絵画芸術のタブーであると主張した人がいたんです。それは18世紀に活躍したドイツの文学者ゴットホルト・レッシングでした。レッシングは主著『ラオコオン』<斎藤栄治訳>(岩波文庫)において、つぎのように述べています。

 

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