絵金芝居絵屏風における異時同図法については、すでによく指摘されるところです。この「鎌倉三代記 三浦別れ」でも異時同図法がきわめて効果的に使われています。瀕死の息子に会おうとしない母・長門、三浦之介と時姫の愁嘆場、井戸から出ようとする高綱の間には、少しずつ時間のずれがあるのですが、一つの画面にまとめて描かれています。
これが異時同図法と呼ばれる構図法で、絵金が芝居絵屏風で愛用するところでした。もちろん「浮世柄比翼稲妻 鈴ヶ森」のように、異時同図法が用いられていない傑作もありますが、ほとんどの絵金芝居絵屏風における基本的構成法だといっても過言ではないでしょう。
その理由として、大久保純一さんが「絵解き」を想定したのは卓見だと思います。人々は芝居の筋をたどりながらこの絵を見たり、また筋を知らない子どもたちに絵を指し示しながら語り聞かせたのだろうというのです。なるほどと膝を打ちたくなります。
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