それに誰もドメニコス・テオトコプーロスなんていわないで、エル・グレコと呼ぶじゃないですかと僕が言うと、すかさず高階先生が「そうですね。みんな美空ひばりと呼んで、加藤和枝とはいいませんね」とおっしゃったのです。
みんな美空ひばりが芸名であることは知っていますが、本名の「加藤和枝」がすぐに口を突いて出てくる人はほとんどいないでしょう。しかも高階先生は、その時すでに文化勲章をお受けになっていたんです。少なくとも、文化勲章受章者で「加藤和枝」を知っている人、それがすぐに出てくる人などいないのではないでしょうか。高階先生は歌謡曲という俗文化においても、知の巨人だったのです。
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