日比野秀男さんの新著『渡辺崋山――作画と思想――』のキモは、崋山肖像画の最高傑作である『鷹見泉石像』(東京国立博物館蔵)の制作事情と制作年代に関する、日比野さんの新しい解釈にあるといってよいでしょう。言うまでもなく、この点については多くの推定が語られてきました。日比野さんにしたがって主要なものを挙げれば、次のとおりです。
①『國華』239号説(1910年) 天保8年(1837)、泉石は藩主土井氏の命により、同家の菩提寺に代参した。その帰り道、崋山宅に寄ったところ、さっそく崋山は下書きを作り、その数日後、完成画をみずから泉石宅へ届けた。
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