私の制作のうち「母性」を扱ったものがかなりあるが、どれもこれも、母への追慕から描いた ものばかりである。母が亡くなってからは、私は部屋に母の写真をかかげているが、私も息子の松篁も、旅行にゆくとき、帰って来たときには、必ずその写真の下へ行って挨拶をすることにしている。
「お母さん行って参ります」 「お母さん帰って参りました」
文展に出品する絵でも、その他の出品画でも、必ず家を運び出す前には、母の写真の
前に置くのである。
「お母さん。こんどはこんな絵が出来ました。――どうでしょうか」 ――と、まず母にみせてから、外へ出すのである。 私は一生、私の絵を母にみて頂きたいと思っている。
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