「22才の別れ」が流行っていたころ、僕は東京国立文化財研究所につとめていましたが、この研究所には大久保一丘[いっきゅう]という画家の「真人図」が所蔵されていました。一連の伝一丘筆真人図のうち、唯一落款印章をともなう基準作です。
この作品については、洋風画研究のパイオニアともいうべき黒田源次先生が、『美術研究』第2号(1932年)に、「一丘筆人物像に就いて」という論文を寄せて考察しています。黒田先生によると、これは22歳ならぬ12歳のキリストを描いたもので、その主題や技法は、『西洋画談』という口述筆録を遺した蘭学者・高森観好と一丘の親交に由来する可能性が高いとのことです。
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