2020年12月15日火曜日

小川敦生『美術の経済』5

 


「ボールペンの試し書き」とは実にうまい形容ですね。そういわれてしまうと、もう他の形容は、いくら考えても出てきません。しかし、トゥオンブリーが自作に「ボールペンの試し書き」と題することは、画家としての矜持が許さなかったでしょう。そうなると、残るは「無題」しかなかったのかもしれません() ところで、小川さんが挙げるピカソといえば、よく知られたエピソードが改めて思い出されます。

あるときピカソが児童画展に出かけ、感想を求められると、「子どものころ、私はこれよりずっとうまかった。しかしこのように描けるまで何十年もかかった」といったそうです。もちろんこれはテクニックを超越して、子どものごとく、自分の描きたいものを、心のままに描くことができるようにまるまで……という意味にちがいありません。

0 件のコメント:

コメントを投稿

サントリー美術館「名品ときたま迷品」4

  その土居先生は左隻について、「ポルトガルの根拠地マカオ(澳門)における南蛮人が日本へ出航しようとする直前の情景を表すものかと思われ、露台上に居並ぶ南蛮人たちのそばには中国官吏二人の姿も見られる。おそらく別離の挨拶に来訪したところを描いたものであろう」とされました。 ところ...