芸術とは何か。その根源的問いに応える碩学の名著。芸術の発祥を古代社会の祭式に求め、その移行の過程を、興味深い事実に基づいて論究し、併せて芸術と人生に及んだ必読の書
ちなみに僕がこの本のことを知ったのは、やはり桑原武夫氏の『一日一言』によってでした。9月9日に、「この日生まれたイギリスのギリシア学者」として、彼女が登場するからです。ところで、先に言った「有名な一節」とは次の文章です。桑原氏の引用にもうちょっと加えて、ここに紹介することにしましょう。
今一つのことでは表現派の一派である未来派が大体正当である。表現すべき情緒は今日の情緒であり、また明日の情緒ならなおさらよい。……真の生きた芸術があるとすれば、それはギリシア彫刻の鑑賞からも、民謡の復活からも、またギリシア劇の再演からさえも、起こってくるのではなく、今日現代的条件の中に生きる事物および人々にたいして感じる、敏感な情緒から起らねばならないのであって、そこには人生の深刻な他の形式とともに、近代の市街のあわただしさや、自動車や飛行機のうなりもふくまれねばならない。(略)
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