次にその思想性、あるいは感性ですね。松前藩のひどいアイヌ政策が、当たり前のように行なわれていた時代、アイヌを自分と同じ人間としてみるヒューマニズムが、武四郎の胸中に育まれていた事実は、ほとんど奇蹟のように思われます。武四郎に何かインスピレーションを与えるような思想が、すでにあったのでしょうか。あるいは、まったく独自に、あのようなヒューマニズムに到達したのでしょうか。
そして人間としての行き方ですね。明治2年、52歳のとき武四郎は、明治政府から開拓判官に任じられ、従五位を授けられます。しかし政府のアイヌ政策を是認することができなかった武四郎は、1年にして一切の官職と位階を返上し、その後は旅と古物蒐集に悠然たる余生を送ったのです。
武四郎のふるさと松阪市にある松浦武四郎記念館は、今回もポスターに使わせていただいた武四郎の肖像写真を所蔵しています。武四郎の姿を知ることができる現存唯一の肖像写真だそうです。明治15年、65歳のとき撮影された写真ですから、その旅と古物蒐集に明け暮れていたころの武四郎ですね。その老武四郎が首からかけている「大首飾り」が、本展覧会の目玉です。ぜひ実物を見にいらしてくださいね!!
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