先の「花鳥図」が中国花鳥画の影響を色濃く残しているのに対し、「神猫図」には宗季の個性がより一層はっきりと表明されているように思います。事実、年記を調べると、「神猫図」は「花鳥図」より10年も遅れて描かれた作品なんです。その10年のあいだに、宗季はかつて就学した孫億などの影響を脱して、自己様式を完成させていたのではないでしょうか。
もっとも、僕にとってさらに興味深いのは、ここに中国絵画からの主題的影響があると思われる点です。中国において猫は、長寿のシンボルでした。「猫」と長寿を意味する「耄」の発音がともに「マオ」で、通音しているからです。「耄」はちょっと難しい漢字ですが、「耄碌[もうろく]」の「耄」いえば分かりやすいですね。中国では特に70歳を指すともいわれているようです。
この神猫のうしろを見ると、小菊が描かれています。中国では、古くから延命長寿を約束してくれる薬効が菊にあると信じられていたために、菊も長寿の象徴として愛されてきました。猫に菊を添える「神猫図」が、長寿をことほぐ絵であったことはまちがいありません。
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