E池田忍「『平治物語絵巻』に見る理想の武士像」(『美術史』138 1995)
私は、以上のように、この絵巻における武士の描かれ方を分析することによって、その注文主が、公家、すなわち天皇を含む上位の男性貴族であると推測するに至った。ここに描かれた武士達は、貴族達の武士観を反映しており、彼らのまなざしに捉えられた武士の姿なのである。
F丹尾安典・河田明久『イメージのなかの戦争 日清・日露から冷戦まで』
<岩波近代日本の美術1>(岩波書店 1996)
仏像を“彫刻”と名付けて分類したときに、われわれはそこから宗教的な次元をきりはなして美的な次元にのみ埋没しがちになるが、仏像はこの両次元が統合された、あるいは、未分化な状態のままにあるときに本来的なイメージの力を存分に発揮する。戦争美術とて事情は同じであろう。戦争と美術とがいまだ分断されぬままの状態のうちにこそ、戦争美術の実相はひらけている。そして、戦争美術はそういう状態のままに、いまも生きつづけている。
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