彼(四世鶴屋南北)は、封建道徳や武士社会の倫理のタテマエに縛られて生きねばならない人間の悲しさ・はかなさ・むなしさを描く反面、本能的な欲望のおもむくにまかせて、自由奔放に生きている人間の強さ・したたかさを存分に描いた。そういう魅力的な人間像は、社会の身分制度から疎外され、底辺を生きる無名多数の男女たちの日常的な生活描写と相俟って、なまなましい迫力をもって見る者に迫る。 濡れ場(濡れ事)・殺し場・責め場など官能的な演技・演出が写実的に繰り広げられ、残酷な局面や怪奇の世界が大胆に舞台化された。
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