依り代になる樹木はクスに限りませんが、依り代として最も重要な樹木はクスでした。常緑樹であることに加えて、すぐれた香気や長い樹齢も太古の人々から尊崇を集めたことでしょう。実をいうと、槿域のもとになった中国の木彫像についても知る必要がありますが、ご存じのように、中国古代彫刻の遺品は石像や塑像、金銅像ばかりですから、諦めるしか仕方ありません。
仏像を神の依り代であるクスで作ることに、垂迹思想の原点を探りたい誘惑にさえかられます。もっとも、仏教誕生の地インドでは、仏像の用材として古来白檀などの檀木が珍重されてきたことから、その代用としてクスが選ばれたという見解もあります。弘法大師が唐から将来した仏龕、いわゆる枕本尊が檀材であることを考えれば、インドを無視することはでません。
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