第三に、両者ともスターシステムによって成立している点です。スターを見るための演劇です。そもそもストーリーは荒唐無稽ですから、これによって社会や人間や心理の本質を考察することは、ほとんど不可能だといってよいでしょう。「人形の家」と比べるまでもなく……。
歌舞伎座に出かけるのは、海老蔵や勘九郎や松也や七之助や玉三郎を観るためなんです。「めぐり会いは再び 真夜中の依頼人」は、礼真琴や舞空瞳を見るために行くんです。公演が終わって外に出てくると、「礼真琴」と書いた小さなプラカードを持った人が並んで、ファンと思われる人からカードのようなものを受け取っていました。僕にはよく分りませんでしたが、宝塚歌劇というより、礼真琴だけが好きなファンの集まりみたいな雰囲気でした。
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