芳賀徹『桃源の水脈 東アジア詩画の比較文化史』(名古屋大学出版会 2018年)
桃源郷はわが尊敬する芳賀徹さんのライフワークです。本書の腰巻に、「古代中国に発し、詩的トポスとして幾多の詩文や絵画を生み出してきた『桃源郷』の系譜を、現代の日本に掬いとるライフワーク」とあるとおりです。
芳賀さんが論文「桃源郷の詩的空間」を東大比較文学会の紀要に発表したのは1977年、以後40年以上にわたる研究の集大成です。しかし、わが『文人画 往還する美』のごとく、単に旧稿を寄せ集めただけのものではありません。今回書き下ろされた章が少なくないのです。
東洋のユートピアとか、アルカディアというと、芳賀さんに怒られてしまうのですが、これが目の前にたち現れて、あまやかな郷愁に僕たちを誘います。しかし芳賀さんがすごいのは、桃源郷というトポスが近代現代の日本にも受け継がれていることを、抜かりなく指摘しているところです。内容は濃密にして、一気に読むのはちょっとシンドイかもしれません。まず興味を覚える一章から、順不同に拾い読みするのがベターです。
*お元気な方は「さん」づけにし、鬼籍に入られた方のみ「先生」とする「饒舌館長」の慣例にしたがったことをお許しください。
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