これらを撮影していたフランスのテレビ局の方からは、中国の陶磁が何で日本の国宝に指定されるのか?という、至極マットウなる質問が出ました。僕はつぎのように答えました。
それはとても古い時代に日本へもたらされたものであり、大切に伝えられてきました。しかもそれは、日本人の審美眼と美意識によって選ばれ、高い評価を与えられてきたものであって、たまたま入ってきて、そのまま偶然残ったというようなシロモノではありません。したがって、誕生地は中国であっても、日本で育った日本の美術なのです。「生みの親より育ての親」ということわざが日本にありますが、まさにそれだといってよいでしょう。
こんな風に一応は答えたのですが、この問題は機会を改めて「饒舌館長」にアップしたいと思います。
最後にジレルさんと奥様から、すばらしいジレル天目をプレゼントされました。見込みで微妙な光を発する曜変は、近くに生える栗の葉を焼いた灰で作り出したものだそうです。
ちょっと小振りなフォルムに、フランスのエスプリを感じさせるそのジレル天目は、いま館長室の立派な丸テーブル――きっと岩崎小弥太が愛用していたにちがいない丸テーブルの上に、一つだけチョコンと乗っかっています。その小さな曜変の斑紋は、あたかもジレルさんの涙のようです。
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