しかし一般的には、今春、奈良国立博物館で特別展が開催され、「饒舌館長」でも取り上げた快慶の方が人気を集め、安阿弥様と呼ばれて広く流布したのです。運慶様式に比べると、快慶様式の方がやさしく、優美で、視覚的に美しかったからです。とてもおもしろい現象だと思います。
もちろん、鎌倉新様式としてくくられる快慶様式にも、力強い有機的構成の美しさは秘められているのですが、運慶様式に比べると、定朝様式に舞い戻ったような感じがするのです。つまり、運慶と快慶だけの比較でいうと、運慶は益荒男ぶりであり、快慶は手弱女ぶりであったということになります。
基本的に日本文化は手弱女ぶりの文化だというのが、僕の個人的見解ですが、手弱女ぶりの快慶の方が、益荒男ぶりの運慶より広く愛好されたという事実もその傍証になるはずです。2008年開催の『國華』120年記念特別展「対決 巨匠たちの日本美術」は、「運慶VS快慶」からスタートしましたが、両方のファンでディベートをやったら、どんなにおもしろいことでしょうか。
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