去年3月発表したKyoto iPopsのファースト・リリースは、「千年のコンチェルト」でしたが、セカンド・リリースとして発表したのが「トリビュート琳派」です。琳派の酌めども尽きぬ魅力を、音楽に昇華させたCDアルバムです。佐藤さん作曲のメロディアスではないメロディーと不思議なリズム、豊かに響き渡るヴォーカルと口上は一度聴いたら忘れられません。
大阪芸術大学の太田聖二さんが作詩を担当、琳派400年の歴史を、わずか6曲のうちに凝縮してしまいます。俵屋宗達や尾形光琳の美のキモを象徴的にとらえた歌詞を追っていけば、もう僕の拙文集である『琳派 響きあう美』なんか、まったく読む必要がなくなってしまいます。
「僕の一点」はやはり「想い膨らむ~『紅白梅図屏風』観~」ですね。目をつぶって曲に身をゆだねていると、光琳畢生の傑作「紅白梅図屏風」が眼前に現れてきます。佐藤さんや太田さんが、いくら愛や恋に偏りがちな現代のポップスから距離を置こうとしても、これだけはかのフロイト的イコノロジーからどうしても逃れられなかったようですね。こんな点からも、小林太市郎という美術史家のすごさが改めて思い起こされるのです。
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