その塩をちょっと箸か手で摘まみながら、一杯やる夕べを想像してみてください。おのずとヨダレが溜まってくるでしょう。塩こそ最高のアテです。かの青木正児も、名著『酒の肴』の中で、そのことを指摘しています。
もちろん酔迂叟先生のことです。『漢書』の「それ塩は食肴の将、酒は百薬の長」から始まって、林羅山の『包丁書録』まで、博引旁証、考証該博、汗牛充棟――人間がコンピューターを使わずに、こんな芸当ができるものかと、改めて驚きを深くします。
岩波文庫本を引っ張り出してきて「塩」の章を読み始めたら、その前の「適口」に戻り、続いて「肴核」「酒盗」「鮒鮓」「鱠」「蟹」「河豚」「鵞掌・熊掌」「厨娘」「魚飯・鯛飯・河豚雑炊」「豆腐腐談」「清朝末年或る日の宮廷の献立」「蘇東坡の味覚」「橄欖の実」と止めることができず、結局跋文まで行ってしまいました。
酔迂叟先生の面目躍如たるその跋文を、全文引用せずにはいられません。旧仮名だけは改めつつ……
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