⑧梅渓図は、いわゆる室町詩画軸の代表的作品です。建長寺の侍史――おそらくは若いお坊さんが、画家にこの絵を描いてもらい、老僧たちに賛を求めたものと推定されています。その画家とは、画風からみて、関東水墨画の大成者である賢江祥啓の可能性がきわめて高いことがすでに指摘されています。
賛を書いたのは、相国寺のお坊さんだったのに、応仁の乱のあと還俗して漆桶万里と号した万里集九と、当時における鎌倉第一の文筆僧・玉隠英璵です。この作品は、島田修二郎・入矢義高編『禅林画賛』にも採録され、二つの賛詩にも現代語訳が施されています。解説者もよく分からないとする箇所に、ちょっと私意を加えながら、またまた戯訳を作ってみました。
万里集九
開き始めた梅の花 門のへんでも馥郁と……
ましてや数百本もある 梅林の中に俺はいる
梅の羅浮山 淡い月 雪の成都もかくありなん
読書は夜!と言うが 春 寝ながら音読すりゃ最高!!
玉隠英璵
鼎[かなえ]に渡す針金の 提手[さげて]に似る橋 渡し舟
橋から南ながめれば 梅が香[か]満つ天 月かかる
「牡丹と竹は美しく 野趣にも富む」は本当だ
しかし書斎と春風に 吹かれる梅もまたしかり
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