しかし僕は、陰陽思想の影響を重視し、胎蔵界曼荼羅を陰、金剛界曼荼羅を陽と考えたいのです。つまり中国において、前者は女性的なもので、仏の慈悲を暗示し、後者は男性的なもので、仏の智慧を表わしていると認識されるようになったと措定してみたいのです。少なくとも、そう考えると分かりやすいと思いますが、もちろんそのもとには二つの御経があります。
僕が名古屋大学にいた時、しばしば仏教について教えを乞うた宮坂宥勝先生に、『密教経典』(講談社学術文庫)があります。重要な4つの密教経典を取り上げ、原文、読み下し、現代語訳、注釈を施した名著です。胎蔵界曼荼羅の基底をなす『大日経』のうち、中核をなす「住心品」がここに選ばれています。
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