その『蕉堅藁』を通読して、僕はとくに春をたたえた詩、春に詠まれた詩に心を動かされました。時あたかも春、またまた僕の戯訳でいくつか紹介することにしましょう。
僕の選んだベストワンは、「春夜月を看る」という七言絶句です。この花は桜じゃなく、梅でしょう。月や香りと相性がいいのは梅ですから……。気心の知れた友達と早春の宵に観梅を楽しむ――いいですねぇ。当然、般若湯もやっているわけですよ。なお、№は入矢先生が振った『五山文学集』の通し番号です。
春夜月を看る(『蕉堅藁』№101)
高士の招いた友人が 集まる四阿[あずまや]春の宵
盛りも過ぎた花の影 庭一面の月光よ!!
くまなく霜が降りたよう 花の香[か]の風 袖に入る
後期高齢者たちの 期待を超える素晴らしさ
後期高齢者たちの 期待を超える素晴らしさ
転句「満袖の香風吹いて藹藹」を上のように訳したのは、『諸橋大漢和辞典』に「藹藹」を求めると、ほんのりとした月光のさまとあり、司馬相如の「長門賦」を引いて、「中庭の藹藹を望めば、季秋の降霜のごとし」とあるからです。また、結句の「衰齢」を「後期高齢者」と訳したのは、間もなく僕がそれになるからです!?
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