もっとも印象深かったのは、晴川養信の「仙境・簫史・弄玉図」三幅対でした。のちにこの傑作は、東京国立博物館で開催された特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」で公開されましたので、ご覧になった方もいらっしゃるでしょう。
野田麻美さんは、幕末狩野派の豊かな絵画世界と美術史上のすぐれた意義に早くから気づき、着々と準備を進めてきました。そして明治維新150年という節目の年に、この特別展を開催することにしたのです。もちろん野田さんも、先の晴川養信に注目していますが、そのお父さんにあたる伊川栄信にも、すぐるとも劣らぬ関心を寄せています。
「僕の一点」は、栄信の「桃鳩図」(個人蔵)です。かの国宝に指定されて有名な徽宗筆「桃鳩図」の写しです。野田さんはこれを「複製作品」と呼んでいますが、かつて野田さんが美術史の仕事に就くため、その準備として数年勤めたキヤノンという感じもしないじゃありませんね(笑)。
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