このような日本の城の石垣に示される特有な造形は、ほんの一例に過ぎないが、これによっても、日本の意匠の美しさは、直線的構成の外に、曲線的構成にも特有のものがあることがわかる。それは日本の環境、風土、材料、構造などに関連すると同時に、私たちの造形的好み、或いは美意識に密接な関係を持つものと信ずる。本稿は、そのような日本の建築における曲線的な意匠を問題として、それを西洋や中国の造形と対比しながら、その造形的特性を明らかにしたいというのが目的である。
先生はこの目的に沿って多くの実例を示しながら論証をすすめ、ある時は自由なイマジネーションの飛翔を楽しむがごとくに試みています。
以下、「前方後円墳とピラミッド」「軒の『そり』とその源流」「軒の『そり』の起源と竹構造」「軒の『そり』とテント起源説」「家形ハニワと軒の『そり』」「『そり』の意匠的表現」「平安時代の屋根の『そり』」と続いて、最後に「書と軒の曲線」をもって終わります。日本美術の特質や素性を考える際にも、必ず参照しなければならない名論文だと思います。
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